土壌その①:テクスチャー

一回でいいから、美味しい柳川鍋を美味しい日本酒飲みながら、池波正太郎の世界のようなスチュエーションで楽しんでみたい。・・・・泥鰌(土壌)だけにねw

 

さて、土壌です。

 

風化した岩石や有機物、空気、水で構成されているのが、土壌。

 

ザックリと割合的には鉱石が40 ~ 60%、水分20 ~ 50%、空気10 ~ 25%、で、有機物。

ご存じの通り、ワイン用のブドウ樹には「痩せた」土壌が適していると言われています。例えば、栄養価に乏しい土壌だと樹勢が抑えられる。さらに貧相な土壌は水捌け良く、さっさと温まり、その上に放熱もする。こんな感じのキャラは、冷涼で湿気あーるな場所にはもってこい、ですな。

 

物理的特性(テクスチャー、構造、色、水分へのアクセスと水捌け、空気)、化学的特性(土壌酸度 / pH、栄養素)、あと生物的特性(有機物、腐植土、微生物、ミミズとかの生物)。これらの土壌特性が絡み合って、ブドウの生育環境に影響を及ぼすんですぅ。

 

では、各特性を細かく見てみましょ。今回は「テクスチャー」に注目。

 

1. 土壌の物理的特性

テクスチャーや構造などの土壌の物理的特性は、保水力や水捌け、栄養素へのアクセス、通気性、根っこの成長、浸食、そして畑仕事にも影響がある。まず、土壌のテクスチャー(粘土質とか砂質とか)が土壌オブ土壌で、構造がその他の特性を生み出すってイメージっすかね。

 

テクスチャーーーーーー!

まずは、一般的な粒の大きさと、それにフィットした名称のリスト。

  • 0.002mm以下:粘土
  • 0.002~0.02mm:シルト
  • 0.02~2mm:砂
  • 2mm以上:小石
  • 600mm以上:丸石

ちなみに、砂質には5%の粘土が、ローム質には25%の粘土、そして粘土質には50%以上の粘土が混じり込んでいるらしい。ローム質が良いとこ取り的な感じで、農業には向いているんだって。

 

粘土質、粘土ローム質、粘土シルト質なんかの細かい⇒中くらいの粒子サイズの土壌だと、栄養素&水分の保持率がバッチリ。反対に、粗めの粒子が多い土壌(砂質とか)だと、水捌けは申し分なくても、保水力と栄養素キャッチ力が弱し。後者の土壌には、時と場合によってヘルプ(灌漑とか栄養追加とか)が施される。

 

良くも悪くも、土壌における粘土質の占有率が肝になるんだわ。こまぁ~~かい粒子がビッチリと詰まっている、これ即ち土の中における各粒子の表面積晒し具合が大きくなる。つまり、その分多くの水分や栄養素と結合したりキープすることが可能になると。

 

で、粘土の興味深い特徴。粘土はスポンジみたいにたっぷりと水分を吸収することが出来るんだけど、なんとその水分のほとんどが、粘土粒子に蓄えられるだけで、植物(ブドウ樹)には行き渡らないこともあるらしい。でも、土壌内に水分は事実として存在する。そーすると、根っこが水浸し(ふやける的な)になっちまう可能性もある。さらに、乾いたスポンジが固いのと同様に、粘土も乾くとカッチカチになる。その状況では、根っこが固い粘土に阻まれて成長出来なくなっちまうのさ。

 

じゃあ、粗っぽい粒子が多い土壌はどうかって?水はするする抜け出すけど、粒子内にホールドされる訳じゃないから、水分があるうちは、植物は水分補給が可能。また、土壌内に空間(隙間)がるもんだから、根の成長を妨げない。でも、栄養価に乏しくて貧相。

 

だから、粘土質でありながらも程良くサイズの大きい粒子を含んだ土壌がナイス・バランスなんだね。・・・・ロームよ、ローーーーーム。粘土、シルト、砂が絶妙に混ざり合っております。なので水捌け、保水力、栄養素含有がおマリアージュこいている上、根っこも成長できます。

 

ちなみに、ビッグサイズな小石や丸石も大事なんですよ。土壌の中に石っころがあると、水捌けが良くなる。地表部隊は、日中に吸収した熱を夜間に放熱したり地表の浸食防止に一役買っていたりするんだ。地表部隊の活躍は、モーゼルみたいな冷涼で急斜面な立地条件の畑には重要なファクターですな。

 

あともう一点。水分含有力バリバリの粘土質だと、土壌の温度上昇が砂質よりも遅い。これにより、春先におけるブドウ樹の本格作動スイッチオンのタイミングが遅くなる可能性がある。ってことは、発芽が遅くなる。ってことは、生育期間が短くなってしまう。ってことは、収穫のタイミングが遅れて未成熟のブドウを泣く泣く収穫しなくちゃいけないかもしれない。

 

参照:Sally Enston (2017), Vine and Vinification

 

 

 

 

今回こそは、台木だぜ

台木、ルートストック イン イングリッシュ。

 

一般的に(ワイン用)ブドウ栽培で使われている台木は、アメリカ原種のヴィティス系なのはご存知の通り。

 

フィロキセラだけではなく、実はベト病やウドンコ病も北米出身らしく、アメリカンなヴィティス一味はそれらに揉まれて進化した。一方で、おヨーロッパのおデリケートな箱入りヴィニフェラちゃんは、そんなデンジャラスとは無縁で育ったもんだから、虫に喰われるは、病気になるはで大変だった。そこでマッチョなアメリカンと出会ってくっついて、現在の耐性を備えた合体系になったんだって。

 

で、前回の記事でも記したとおり、アメリカ系ヴィティス属にはフィロキセラ以外の諸問題に対して対応力あり。そこで、そもそもの台木をハイブリット化して、それぞれの親(?)となるブドウ種のいいとこ取りをしよーではないか!となった訳です。

 

・虫系問題(フィロキセラ、線虫)

・石灰に馴染めず萎黄病行き

・渇きに対する強い根性

・マッチョな樹勢

 

これらの問題は、台木選択で、解決まで行くかはビミョーだけど、一定の好影響がもたらされますぅ~。

 

①フィロキセラ

・この虫野郎に対しての初期的な対処は、ヴィティス・リぺリア、或いはヴィティス・ラペストリスを台木にするって試み。これはフィロキセラに対してはガッツリと耐性を備えていたけど、アウェーの土壌(石灰質)に馴染めず萎黄病が勃発。

 

・そこで、ヴィティス・ベルランディエリ、ヴィティス・リパリア、ヴィティス・ラペストリスの間でハイブリッド台木さ創るべ!って展開に。

【例】

 ◆V. ベルランディエリ × V. リパリア = 5BB Kober

  • フィロキセラ耐性:◎
  • 線虫耐性:根こぶ線虫〇~◎、短剣線虫〇
  • 土壌特性に対して:乾燥〇、水分▲、塩分〇、石灰〇~◎
  • 樹勢:まぁまぁ

 

 ◆V. ベルランディエリ × V. ラペストリス = 140 Ruggeri (140R)

  • フィロキセラ耐性:◎
  • 線虫耐性:根こぶ線虫▲~〇、短剣線虫▲
  • 土壌特性に対して:乾燥◎、水分▲、塩分〇~◎、石灰〇~◎
  • 樹勢:まぁまぁ

 

②線虫

・いい虫もいれば、悪い虫もいる。悪さをする連中は、ブドウ樹の根っこを傷つけて水分と栄養調達の邪魔をする。で、成長が芳しくなくなり、品質&収量に悪影響を及ぼす。

 

・やっかいなのは、悪い線虫は(善良なのもそうだろうけど)管理はできても、抹殺できないという点。土壌消毒は土壌の表層部にしか届かないし、線虫専用殺虫剤をぶちまけると、善良な虫さん達まで根絶やしにしてしまう問題が。

 

・そこで登場するのが、線虫コンバット向きの台木。

【例】

 ◆V. シャンピニー = Salt Creek、Dogridge

  • フィロキセラ耐性:〇~◎
  • 線虫耐性:根こぶ線虫◎、短剣線虫▲~〇
  • 土壌特性に対して:乾燥〇~◎、水分▲~〇、塩分〇~◎、石灰〇
  • 樹勢:Salt Creek 超マッチョ、Dogridge まぁまぁ~マッチョ

 

③石灰

・ヴィニフェラちゃんは、石灰豊かな土壌が多いヨーロッパの土壌に良く順応している。でも、アメリカンな台木、特にV. リパリアとV. ラペストリスは石灰質土壌があまりお好みではない。それに伴い鉄分不足、つまり萎黄病(クロロシス)に罹患しちゃうんだな。

・そこで!ここでもレッツ・ハイブリッドで乗り切ろーぜという展開に。

【例】

 ◆上記の5BB Kober、140 R

 

④塩分

・しょっぺー土壌では、ブドウはたわわに実らんのだよ。こいつらに任せておきな。

【例】

 ◆V. リパリア × V. ラペストリス = Schwarzmann

  • フィロキセラ耐性:◎
  • 線虫耐性:根こぶ線虫〇、短剣線虫◎
  • 土壌特性に対して:乾燥〇、水分〇、塩分〇~◎、石灰〇
  • 樹勢:まぁまぁ

◆V. ロンジー × V. リパリア = 1616C

  • フィロキセラ耐性:◎
  • 線虫耐性:根こぶ線虫◎、短剣線虫〇
  • 土壌特性に対して:乾燥▲、水分◎、塩分〇~◎、石灰▲~〇
  • 樹勢:弱し

 

 ⑤水分不足への耐性

・気候変動に伴い、温暖化が絶賛進行中の我らが地球において、水分不足に対する体制の必要性は重要視されていますな。特に、灌漑御法度な地域や、灌漑の設備が整っていなかったり、(そもそもの水不足に伴う)灌漑の規制が厳しい地域では尚のこと。

 

・V. ラペストリスは地中深くまで根を伸ばす種類なので、地表面蒸発から逃れられる深さにある水分に手が、いや根が届く訳ですよ。こいつを片親として交配してみると・・・。

【例】

◆V. ベルランディエリ × V. ラペストリス = 140 Ruggeri (140R)

  • フィロキセラ耐性:◎
  • 線虫耐性:根こぶ線虫▲~〇、短剣線虫▲
  • 土壌特性に対して:乾燥◎、水分▲、塩分〇~◎、石灰〇~◎
  • 樹勢:まぁまぁ

 

◆V. ベルランディエリ × V. ラペストリス = 110 Richter (110R)

  • フィロキセラ耐性:◎
  • 線虫耐性:根こぶ線虫▲~〇、短剣線虫▲
  • 土壌特性に対して:乾燥◎、水分▲~〇、塩分〇、石灰〇
  • 樹勢:まぁまぁ

⑥樹勢

・畑の管理、「おテロワール」、その年の気候などから大きな影響を受けるとはいえ、台木だって樹勢コントロールに一役買っているんだぜぃ。特にV. リパリアを台木の片親とした場合、樹勢がマイルドになる傾向があるらしい。

【例】

◆V. ベルランディエリ × V. リパリア = 420 A

  • フィロキセラ耐性:◎
  • 線虫耐性:根こぶ線虫〇、短剣線虫▲
  • 土壌特性に対して:乾燥▲、水分▲~〇、塩分▲、石灰〇~◎
  • 樹勢:弱し

 

台木、まさに縁の下の力持ち。ここれら一例の上にドッキングされるV. ヴィニフェラの特性との掛け算で、ブドウ樹の一丁アガリって感じなのかな。土壌特性、気候風土、畑の設計、利益を生むために必要な生産量などなどの条件を十分に検討した上での、重要な決断項目のひとつなんですねぇ。

 

☆参照:http://iv.ucdavis.edu/files/24347.pdf Rootstock Selection

Sally Enston (2017), Vines and Vinification

台木・・・その前に

「台木」と言ったら、おヨーロッパのヴィティス.・ヴィニフェラ×アメリカンなヴィティス一味。

これ、あくまでもフィロキセラに対抗するための基礎的な役割を果たすハイブリッドの大枠で、台木は色んな特徴を兼ね備えております。

 

まずは、アメリカンチームの代表選手とその特徴を簡単に、ザックリと、大雑把に、そんな感じで見てみよう。ブドウ種の日本語読みが間違っていてもドンマイだぜ。

 

①ヴィティス・ベルランディエリ(V. berlandieri)

・テキサスとメキシコ国境がある、アメリカ南西部で発見された種類。そこってば石灰岩土壌なもんですから、当然その土壌に対して順応進化。石灰岩土壌が多いヨーロッパにおいて、その土壌特性に対しての耐性がイマイチなアメリカン・ヴィティス達は、一般的には苦労するらしい。が、ベルランディエリはバッチコイなのさ。

 

・さらに!ベルランディエリはフィロキセラを耐え忍べるだけではなく、カビ系の病気病気、一部のバクテリア系の病気にも耐性アリ。さらにさらに!!根を地中深くまで成長させる種類なんで、渇きに対してもそこそこの戦闘力がある。かなり優秀な種類ですなぁ。

 

②ヴィティス・ラブルスカ(V. labrusca)

・これは、アメリカ東部出身のブドウ種。コンコルドとかの台木になっております。で、ラブルスカ、メチル・アンスラニレートに起因する「フォクシー・フレーバー」を持っているんですよ。

 

・そして、誰かさんがフィロキセラを宿したこのアメリカン・ブドウをヨーロッパに持ち込んじまったがために、フィロキセラが大ブレイクしたと考えらえているそうだ。

 

・そんなラブルスカ選手は、寒さとウドンコ病に耐性がある。しかーし。ベト病、一部バクテリア系病、そして石灰に弱し。致命的なことに、フィロキセラに対してもそれ程強くないらしい・・・ダメじゃん。なんでも、フィロキセラがやりたい放題していない、アパラチア山脈の砂地土壌(フィロキセラが嫌いな土壌ね)で進化しちゃったかららしい。

 

③ヴィティス・リパリア(V. riparia)

アメリカ各地、カナダのロッキー山脈よりも東側で生息。

 

・リパリアはフィロキセラに対して立派な耐性がある上に、カビ系病、寒さにも強い(マイナス30℃位なら平気だぜ)。しかし。石灰に弱し。バクテリア系病に弱し。渇きにも弱し。基本的に根を深くはらないタイプとのこと。

 

④ヴィティス・ラペストリス(V. rupestris)

アメリカ南西部出身のブドウ種。フィロキセラ、ウドンコ病、ベト病に強く、石灰が苦手。そして、リパリアとは異なり、これは根を地中深くまで伸ばすタイプさ。

 

それではお待ちかね。台木ーーーーーは次の記事で。

 

ブドウの芽(蕾)

ブドウの芽には2種類あって、

①Compound Buds(和訳が分からん)

 ・その年の生育期間に形成されて、翌年の生育期間に発芽する。

 ・この蕾が、翌生育期間の主枝(?)を生み出す。

 ・このcompound buds の中にも、第一、第二、第三芽が存在する。

 ・第二、第三芽は第一芽にダメージ(霜とか)が発生した場合のみ成長する。

 

②Prompt Buds(これも和訳が分からん)

 ・同一の生育期間中に形成、発芽する。

 ・Compound buds から形成された主枝に出来、lateral shoots(第二枝、的な?)を造り出す。

 

Lateral Shoots

・上記の通り、後発芽から形成される枝。

・この枝の主な機能は、主枝にダメージが発生したり(害虫に)食べられてしまった場合でも、ブドウ樹が成長を続けられるサポートをすることなんだな。

・さらに、ここから生える葉が光合成の新たな源にもなる。

・この枝、主枝の端っこに形成されたら、多くの日光に晒されるんで価値あり。

・逆に、主枝の根っこの方だと、気流を阻害するかもしれないので芳しくない。

・Lateral Shoots も花序を形成する。この花序、second crop ね。

 →これができるか否かは、ブドウ品種とキャノピー・マネジメントによる。

・後発花序は、当然主枝から出来たものよりも後に開花、結実、成熟する。

 →もし、全部の果房を一緒に収穫すると、後発花序から生まれた果実は、

  先発組よりも糖度が低く、酸が高い。メトキシピラジンもゴリゴリ。未成熟な

  タンニンが加わったりで、製品化したワインの品質に良からぬ影響を及ぼす。

 →後発花序はグリーン・ハーベストで除去されるケースもある。